2010年、読んだ本を振り返る

振り返るパート2。

※以下に挙げるのは2010年に「私が読んだ本」の中でおもしろかったものです。2010年発行の本とは限りません。

スティーブン・ミルハウザーエドウィン・マルハウス―あるアメリカ作家の生と死』
きらきらした描写にうっとりしながら物語の沼にずぶずぶ嵌る、私はこういう小説が好きだ。大傑作。もっと早く読んでおけ、私。

■ロベルト・ボラーニョ『野生の探偵たち』
雑多な登場人物が二人の詩人について語る……という大枠はあるけれど、その雑多な登場人物たちの雑多なエピソードが良い。読み終わった瞬間にもう一度読みたくなった。再読はしていない。

ポール・オースター『最後の物たちの国で』
現時点で読んでいるポール・オースターの作品の中で一番好き。もしかしたらずっとこれが好きかもしれない。女性はぜひ!っていう言い方は気に入らないけど、なんというかこの物語の中の女性の「立ち位置」に頷きたくなる。

山尾悠子『歪み真珠』
おいしいチョコレートを一粒ずつ食べる感じで読んだ。

伊藤計劃虐殺器官』『ハーモニー』
こんなにすごい話を書ける人がいたなんて。そしてもうその人はいないなんて。

オルハン・パムク『新しい人生』
この作家の何が好きって、彼の書くトルコ、主にイスタンブールとか都市部の描写が薄暗いところ。地中海だし、本当のトルコはもっと陽気な雰囲気なのでは。ちなみにこの本のかなり後に佐々木中『切り取れ、あの祈る手を』を読んで「東と西」というか「本を読めちゃった人」の話だったんだな、と思った。

キアラン・カーソン『シャムロック・ティー
「お話」が積み重ねられていくのは『琥珀捕り』と同じだけど「ぼく」を巡る大枠があるのでずっと読みやすかった。登場人物はウィトゲンシュタインシャーロック・ホームズ、ブラウン神父、オスカー・ワイルド(偽者?を含む)などなど。好き。

ジェイムズ・エルロイL.A.コンフィデンシャル
かっこいい!完璧にかっこいい!バラバラな事件がある一点に向かって収束していく感じとか、エド、バド、ジャックがそれぞれ覚醒していくとことか、鳥肌立つ。

ケストナー飛ぶ教室
ケストナーの書く「賢い子ども」にきゅんとくる。彼らを見守る大人もいい。禁煙さんに正義さん。

トム・ジョーンズ『拳闘士の休息』
いい文章。ゴツゴツした手触りだけど心地良い。

ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』
今年はこれが読めて幸せ。本当にエーコ先生は太っ腹だ。中世を舞台にしたおもしろ冒険小説+密室ミステリ+クレタ人の嘘つきのパラドックス

デイヴィッド・ベニオフ『卵をめぐる祖父の戦争』
悲惨とくすくす笑いがなぜか同居していて、「弥次喜多戦争小説」と名づけよう。「聖彼得堡道中膝栗毛」でも可。ポケミスじゃなかったらもう少し早く読んだんじゃなかろうか……。

この中でベストを決めるとしたら…『エドウィン・マルハウス』か。

エドウィン・マルハウス―あるアメリカ作家の生と死

エドウィン・マルハウス―あるアメリカ作家の生と死

2010年に発行されたものだったら『バウドリーノ』……?

バウドリーノ(上)

バウドリーノ(上)

むー。『野生の探偵たち』も捨てがたい。

野生の探偵たち〈上〉 (エクス・リブリス)

野生の探偵たち〈上〉 (エクス・リブリス)

2011年もおもしろい本に出会えますように。

■時間はかかっているものの、エーコ『無垢の博物館』は下巻に突入。変態がいる!と(心の中で)叫びながら読んでいる。今月中には読み終わりたい。