『不思議のひと触れ』他
■シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』読了(15日)。
- 作者: シオドア・スタージョン,大森望
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/08/04
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (27件) を見る
■坂下昇編訳『ホーソーン短編小説集』読了(18日)。
- 作者: ホーソーン,坂下昇
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1993/07/16
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 87回
- この商品を含むブログ (19件) を見る
いくつか気に入った短編はあるけどれども、「ウェークフィールド」(オースターの『幽霊たち』に出てくる)のすばらしさは飛びぬけ!だ。
ある男が妻に何日か留守にするよ、と言って20年姿を消す。しかもその20年間、男は妻の住む(男もかつて一緒に住んでいた)街からすぐ近くのアパートに住み、彼のいない生活を送る妻を眺め続ける。
この小説には「なんで?」「どんな?」「何を?」「どうして?」の部分は書かれない。なんで主人公は家を出たのか。なんで主人公は妻の家から近いところで妻を眺め続けたのか。主人公はどんな気持ちだったのか。妻は何を思っていたのか。なんで妻は20年ぶりに帰ってきた夫を受け入れたのか。
しかし書かれていない、だからこそ私はウェークフィールドのことを考え続けてしまう。イシグロの『遠い山なみの光』を読んだときにも感じた「書かれないこと」でいや増す存在感。すごい小説。