2011年、読んだ本を振り返る
舟橋克彦『ぽっぺん先生の日曜日』で始まりフアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』で終わった2011年。読んだ本の冊数は99冊。上下巻の本も上1冊下1冊のように数えているので実際はもう少し少ないかな、とは思う。
特に「ベスト○冊」とは決めないで、2011年に読んだ本の中でおもしろかったものを読んだ順に並べていく。ちなみに「2011年に読んだ本」なので2011年発行のものとは限りませんよ。
■『無垢の博物館』オルハン・パムク
変態ケマルのネチネチした独白にゲンナリしながらもずるずると引き込まれ最後には何かを納得してしまう。何かとは何か?は恥ずかしくて言いたくない。
■『西南シルクロードは密林に消える』高野秀行
脇に出てくる怪しげな人たちが最高。とくに「エピキュリ大尉」。
■『愛おしい骨』キャロル・オコンネル
オコンネルの書くちょっと壊れた人々が本当に好きだ。
■『神戸・続神戸・俳愚伝』西東三鬼
最初の一行を読んで好きだと確信した。たぶん今後何度となく読み返していくんだろう。
■『アイルランド・ストーリーズ』ウィリアム・トレヴァー
完璧な短編小説、というのはこういう作品たちのためにある言葉。
■『ミステリウム』エリック・マコーマック
最初は手のひらで掴めそうな謎がページをめくるごとにどんどん膨らんでいってとらえどころのないモノに変わって行く。
■『緑の家』マリオ・バルガス=リョサ
小説ってすごい!
■『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ
第二部が特に。ずーっと積んでいたのをやっと読んでたまげた。
■『島とクジラと女をめぐる断片』アントニオ・タブッキ
うっとり。
■『遠い山なみの光』カズオ・イシグロ
女たちの会話の「感じ」がうますぎる。
■『精霊たちの家』イサベル・アジェンデ
悲惨なことも語られるけれどクスッとさせられてしまう「みんなどこかおかしい」一家の百年史。1行目から引き込まれた。すばらしい。
■『アンダーワールドUSA』ジェイムズ・エルロイ
ドワイトの言葉にときめく。あと、エルロイが「女たちの物語」が語っていてなんだか新鮮。
■『競売ナンバー49の叫び』トマス・ピンチョン
かっこいい。おもしろい。どうやら私はピンチョンが好きらしいことに気がつく。
■『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り―漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代』坪内祐三
明治の初めから日清戦争勃発までの七人男の歩みを描きつつ何かが始まる/始まった「明治」という時代の空気が伝わってくる。
■『地下鉄のザジ』レーモン・クノー
登場人物たちが思わせぶりなことを言い出すのも多分全部クノーの悪ふざけ。大好き。
■『ネヴァーランドの女王』ケイト・サマースケイル
近くにいたら絶対いやだけれど妙に魅力的な「男装の麗人」“ジョー”・カーステアズの生涯。良い!なぜ品切れ。
■『女たちの時間―レズビアン短編小説集』利根川真紀 編訳
とても良いアンソロジー。レズビアンと銘打っているけれど、女性同士の性愛というよりさまざまな形の女性同士の交流、愛を描いた作品たちといった感じ。なぜ品切れ。
■『夏の黄昏』カーソン・マッカラーズ
読みたくて仕方がなかったマッカラーズ。沁み渡る。
■『老妓抄』岡本かの子
10年ぶりの再読。いやあすげえ。上手すぎる。10年前に読んだときは生々しくていやだと思っていたので年は取るものだ。
この中で一番を選ぶとしたら『精霊たちの家』か『緑の家』か。いやあどっちかは選べないなー。あと西東三鬼の『神戸・続神戸・俳愚伝』も捨てがたい。
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2011年に発行された本の中だったら『地下鉄のザジ』か。上に挙げてはいないけれど『サリー・マーラ全集』も良かったので私はクノーが大好きだ、というとが発見できて良かった。今年も読むぞ!で、『百兆の詩篇』がうらやましくてむせび泣くぞ!
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番外編として「2011年、おもしろかった短編小説」も。
ウィリアム・トレヴァー「パラダイス・ラウンジ」(『アイルランド・ストーリーズ』)
ホーソーン「ウェークフィールド」(坂下昇 編訳『ホーソーン短編小説集』)
コルタサル「南部高速道路」(『コルタサル短編集 悪魔の涎・追い求める男 他八編』)
岡本かの子「鮨」(『老妓抄』)
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2012年もおもしろい本に出会えますように。