2012年、読んだ本を振り返る
マリオ・バルガス=リョサ『悪い娘の悪戯』で始まりクリスティ『アクロイド殺人事件』で終わった2012年。読んだ本の冊数は去年と同じ99冊だった。このあと一歩な感じ。
2012年読んだ本の中でおもしろかったものをだいたい読んだ順に振り返るよ。
■マリオ・バルガス=リョサ『悪い娘の悪戯』
「今でも私のこと、愛してる?」という言葉とともに主人公リカルドの前に現われ、毎回絶望のどん底に突き落とすニーニャ・マラ(悪い娘)がとてつもなく良い。リカルドもどうかしていてとてもいい。
■カルロス・バルセマーダ『ブエノスアイレス食堂』
本当においしい料理を食べたときになぜだか悪いことをしている気持ちになる、その理由の一端を垣間見た、と思う。
■チャイナ・ミエヴィル『都市と都市』
見ないことで対処、って私もよくやる。
■オルハン・パムク『わたしの名は赤』
祝新訳版!この小説やっぱり大好き。
■長嶋有『ねたあとに』
2012年は突如「長嶋有を読め!」という啓示を受けた。読んだ中で1冊選ぶなら断然これ。ボロい山荘で大人が変なゲームしているだけの話だけどすみずみまで好き。
■マリオ・バルガス=リョサ『チボの饗宴』
これぞリョサ、な構成でぐいぐい引っ張る。どう考えても悲惨なことがこの先起こるだろうからあまり先を読みたくない、でも読むのをやめられない…。
■谷崎潤一郎『細雪』
うっとり。赤痢で苦しむ妙子の姿を妙にネチネチと描写するのがまた谷崎らしい。ちなみにこの後『阿修羅のごとく』『高慢と偏見』と続けて四姉妹ものを読んで楽しかった。
■内澤旬子『飼い食い』
〈今多くの人が厳然と信じているペットと家畜の境界を、私はあえて曖昧にしてみたい。名を呼んで、その動物に固有のキャラクターを認めて、コミュニケーションしたうえで、殺して食べてみたかった。〉
■トマス・ピンチョン『LAヴァイス』
ゆるーいドタバタ、コネタ、妙にじーんとさせられる文章、すべてが〈黄金の牙〉に結びつくように「見える」ゾクゾク感。しかも読みやすい、というオマケ付き。ポール・トーマス・アンダーソン監督で映画化するらしい。主演はロバート・ダウニーJr?もし本当だったらピッタリすぎる。
■キャロル・オコンネル『吊るされた女』
マロリー!ライカー!今年もシリーズ新刊出るらしい。うれしい。
■岸本佐知子編訳『居心地の悪い部屋』
すばらしく厭な気分にさせてくれるアンソロジー。ジュディ・バドニッツ「来訪者」、ジョイス・キャロル・オーツ「やあ! やってるかい!」が特に気に入った。
■W・G・ゼーバルド『アウステルリッツ』
読み終わったあとただもう呆然。そのままもう1回読んだ。記録と記憶の物語。
■アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』
中学生のときに読んで以来の再読。小説を読んで初めて「立ち直れないかもしれない」と思ったある意味トラウマ本。クリスティー先生容赦ねえな。
■酒見賢一『泣き虫弱虫諸葛孔明 第壱部』『〜第弐部』『〜第参部』
今まで三国志とは無縁に生きてきた(というかなんで皆さんそんなに三国志に詳しいの?特に男子)が、友人に薦められて読んでみたら最高におもしろかった。ちなみに登場人物(?)では裴松之が一番好き。続きが早く読みたい。
■ミハイル・A・ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』
モスクワに悪魔が現れさあ大変とテンション高い物語を楽しんでいたら「原稿は燃えない」で不意打ち喰らう。すごい小説。
■ドストエフスキー『悪霊』
ピョートル、それは愛の告白では…!?とかスタヴローギン何やってんの…!?とかステパン先生ダメじゃね?とかずっとツッコミ入れながら読んだ。今年はカラマーゾフ読みたい。ちなみにスタヴローギンの告白読んで思い出したのは木嶋佳苗の手記。自分は自分を完璧にコントロールしている(と思い込んでいる?)っていう感じが。
■莫言『白檀の刑』
祝ノーベル賞!某バーでひとり(人を巻き込みつつ)祝杯をあげた。処刑の場面は残虐なのに奇妙にうつくしい。そして悲惨なのに滑稽な物語。
■小田雅久仁『本にだって雄と雌があります』
大好き。本棚、押入れ、ベッドの下、机の上、床、会社なんかにも本が溢れているのを見ながら「自分でたくさん買ったのは認めるけどこいつら勝手に増えてるんじゃないの(この間かなり処分したし)」と思ったことがあるそこのあなたに読んで欲しい傑作。
■橋本治『虹のヲルゴオル』
映画を題材にしたエッセイというか、「綺麗な女」の人生と「綺麗な女が映画で演じた女」の人生の話。橋本治はすごい!ちなみに今年読んだ中でこの本と同じ引き出しに入れるのは山崎まどか『女子とニューヨーク』と山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』。
■ジョン・ル・カレ『スマイリーと仲間たち』
2012年は『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』『スクールボーイ閣下』とル・カレのスマイリー3部作を読んだ。中でも印象深いのは『スマイリーと仲間たち』。スマイリーの見せ場がたっぷりなので。地味だけどしびれる。そしてどこまでいっても苦い。
■オルハン・パムク『雪』
祝新訳版!その2。もちろん旧訳でも読んでいるのだが「こんなにおもしろい小説だったの?」と…。あとパムクって巧い作家だなとつくづく思った。『わたしの名は赤』より新訳ありがとうございます度高し。
この中で一番を決めるなら『本にだって雄と雌があります』か?
- 作者: 小田雅久仁
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巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)
- 作者: ミハイル・A・ブルガーコフ,水野忠夫
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2012年発行のものだったら『本にだって〜』と『悪い娘の悪戯』。
- 作者: マリオ・バルガス=リョサ,八重樫克彦,八重樫由貴子
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では、2013年もおもしろい本(とたのしい酒)が私の身近にありますように。