2013年、読んだ本を振り返る

藤沢周平『龍を見た男』に始まり、杉江松恋『読み出したら止まらない! 海外ミステリーマストリード100』で終わった2013年。読んだ本の冊数は102冊だった。途中無職期間を挟んだ割にはそんなに増えていない。

いつも通り2013年に読んでおもしろかった本をだいたい読んだ順に振り返ります。

皆川博子『花闇』
しびれる。最初の1ページでつかまれてしまった。語り手の三すじの愛おしいと思うことと憎いと思うことは同じ、な目線がすばらしい。

宮部みゆき『ソロモンの偽証 第I部事件』、『〜 第II部決意』、『〜 第III部法廷』
夢中になって読んだ。今まで「宮部みゆき苦手なんだよねー」とかナマ言ってすみませんでした。

ガブリエル・ガルシア=マルケスコレラの時代の愛
この小説が好きだってことはよくわかるのだけれどあとはわからない。これは愛の話なのか、これは愛なのか、そもそも愛ってなんなのか(重症)。「人の心というのは分からないものだな」(p.482)だそうです。同感。

高野秀行『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドど戦国南部ソマリア
「ソマリ群雄割拠之図」がいきなりすごいしこれを見た瞬間、傑作認定してしまったけれど裏切られなかった。おかしくて思わず吹き出したり、あまりのことに呆気にとられたり、「国家って何?」と考えてみたりした。

辻原登『闇の奥』
ぐらり

辻原登『遊動亭円木』
こりゃすごい。目が見えないまま現実とも夢ともつかない場所にひょろひょろーっと行ってしまう円木。ちなみに円木の顔は入船亭扇辰師匠を当てはめて読んでいた。結構いいと思うのよね。

■バーバラ・ヴァイン『アスタの日記』(上下)
いやもう本当にこれ傑作なんで。ヴァイン最高なんで。これが好きな人は『ステラの遺産』もおすすめ。続けて読んだ『階段の家』もすごかった。いやもうほんとヴァイン最高なんで。

橋本治『大江戸歌舞伎はこんなもの』
誰も見たことがない100年以上前の江戸歌舞伎をこんな風に書けるのは橋本治だけ。

岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』
団菊左全盛の明治時代の芝居に関するエッセイ。明治と江戸って地続きだったんだな、と思う。うらやましい。私も岡本綺堂になりたい。

■矢内賢二『明治キワモノ歌舞伎 空飛ぶ五代目菊五郎
明治の歌舞伎ってつまらなさそう(「活歴」とか「天覧歌舞伎」とか)って思っていたのだが間違っていたらしい。「見世物の親玉」たる「歌舞伎」のおもしろさ、明治という時代そのもののおもしろさが充分に伝わってきた。あとはなんと言っても五代目菊五郎という役者の魅力的なこと!

リチャード・パワーズ囚人のジレンマ
すごいの、これ。書かれているのは「個人の決定がどれほど世界に影響を与えうるのか?」というあまりにも切実な問いなのだが、最後はじわっとあたたかで優しい感じを受けるのが不思議だった。

近松門左衛門『曾根崎心中 冥途の飛脚 心中天の網島』(角川ソフィア文庫
痺れるような文章の連続でただ読んでいるだけでときめく。あと心中場面が結構凄惨で驚いた。喉をえぐりにえぐっている。現行上演の床本とはずいぶん違うみたい。

コニー・ウィリス『オール・クリア1』『〜2』
『ブラックアウト』『オール・クリア1』の「ほとんど話が進んでないのでは…?どうするのこれ…?」(でもおもしろいのですよ、いやになってしまうくらいに)から『オール・クリア2』での花火がぼんぼん上がるような怒涛の展開。堪能した。登場人物たちが自分の置かれている状況がわからないままにそれでも自分のいる場所でベストを尽くそうとする姿には涙。ウィリスー!

スティーヴン・ミルハウザー『マーティン・ドレスラーの夢』
マーティンが自分の夢の世界に向かって登りつめていく歩みと、その世界が壊れていくさまをじっくり読めて幸せ。最後の数十ページのうつくしさ。

クリストファー・プリースト『夢幻諸島から』
最高。何度でも読めそう。それでたぶん読むたびに全く違う夢幻諸島が現われるんだろう。プリーストー!

マリオ・バルガス=リョサ『世界終末戦争』
全部ある。圧倒的。

山城新伍若山富三郎勝新太郎 無頼控 おこりんぼさびしんぼ』
勝新太郎がまともに思えてくるくらい若山富三郎のどうかしているエピソードが素敵過ぎる。

奥泉光『グランド・ミステリー』
こういう本(というかここに挙げている本はすべてそうなのだけど)を読むと私なんかが何言ったって作品の魅力には追いつけないんだからとにかく読めよ!としかいえなくなるのでとにかく読めばいいと思う。

■ローラン・ビネ『HHhH(プラハ、1942年)』
ゲシュタポ長官ラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件を題材にした「歴史小説」かつ「歴史」を「書く」とはどういうことなのか?と資料に埋もれながら作者が悪戦苦闘し、ぼやく「小説」。こんなのもアリなんだな、と驚く。銃撃シーンが本当にすばらしい。

ウィリアム・シェイクスピア十二夜
ついにシェイクスピアに手を出すときがやってきた!何だこれ超おもしろい。今年からちょこちょこシェイクスピア(と近松)を読んでいくことにした。ゆくゆくは原書で、そしてできればロンドンにシェイクスピア劇を見に行きたい!


この中で特に!というんだったら

まずはコニー・ウィリス『オール・クリア1』『〜2』でしょ、

オール・クリア 1(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

オール・クリア 1(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

オール・クリア2 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

オール・クリア2 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

それからクリストファー・プリースト『夢幻諸島から』と、

奥泉光『グランド・ミステリー』も捨てがたい。

そういえば2013年は織田作之助おもしろいんじゃん!と気づけた年でもあった。NHKで「夫婦善哉」のドラマやるというので読んでみたらはまってしまった。「僕と共鳴せえへんか」は本当にすごい言い方だよ。機会があれば使ってみたい。どんな「機会」なのかはちょっと想像つかないが。

というわけで2014年ものん気にたのしく本が読めますように。