『バウドリーノ』、早川書房まつり

ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』読了(21日)。感想はただ一言、楽しかった!

バウドリーノ(上)

バウドリーノ(上)

バウドリーノ(下)

バウドリーノ(下)

まず、主人公バウドリーノは自分のことを「嘘つき」だと言いながら、ニケタス(実在します)という歴史家に、神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世(バルバロッサ)の養子として育てられた子ども時代から今(第4回十字軍のコンスタンティノープル)に至るまでを語るという大枠がまずある。だけど、自分のことを「嘘つき」っていう人の話を果たして信じられるのか?という疑問が当然出てくるので、大枠全体が「クレタ人の嘘つきのパラドックス」みたいになっちゃってるのが、おもしろい。
で、バウドリーノの話す内容が、前半は宮廷での権謀術数、後半は司祭ヨハネの王国を目指す東方への旅。後半は、騎士道物語風に展開して、不思議な生き物、怪物がこれでもか!と出てくるわ(エーコ先生、ここを書くのすごく楽しかったんだろうなあと思った)、恋もあるわ、密室殺人もあるわ……って太っ腹すぎだよ、エーコ先生!楽しくないわけがない。

たぶん中世史をもっとちゃんとわかってる人の方が「仕掛け」がはっきりわかっておもしろいんだろうな、とは思うが。プレスター・ジョン - Wikipediaの項目を見ただけでも「おおっ」と思うことが多かったし。ニケタスの書いた本だって…。

■今読んでいるのはジェイムズ・エルロイ『ホワイト・ジャズ』。
9月から『ブラック・ダリア』を読み始めて、やっとLA4部作が完結する。文体が読みにくいと聞いていたけど意外に平気。起こったことはだいたい会話で把握できるし。

■次の本をどうするか決めるため、なんとなく各出版社の刊行予定をチェックしてたら、早川書房の12月ラインナップが大変なことになっていた。

12/10 伊藤計劃『ハーモニー』(文庫)
12/25 マーガレット・アドウッド『オリクスとクレイク』
12/25 オルハン・パムク『無垢の博物館』上下

大変ってたった3冊じゃんと思うかもしれないけれど、普段はひと月に新刊3冊、しかも同じ出版社のものなんんぞ買わない。あとは、村上春樹訳のチャンドラー『リトル・シスター』も12/10発売だったり、なんかすげえぞ、早川書房!ネットの隅っこで見つけた「パムクの『The Museum of Innocence』年内に刊行予定」なんて情報はあてにならないと思っていたよ……。申し訳ありませんでした……。いや確かに版元の方のインタビューで出てたんですけど……。

さて、年末までの読書計画を立て直さないとな。エルロイ終わったらベニオフ『卵をめぐる祖父の戦争』を読んで『ハーモニー』読んで、パムクといきたいところだけど、たぶん間が空いちゃうからえーっと、『音もなく少女は』とか『愛おしい骨』とか『時の地図』とかを読もうか。山尾悠子『夢の遠近法 山尾悠子初期作品選』も読みたいんだった……。本当はピンチョン『逆光』を年末年始に読もうと思っていたけど、ムリですなムリ。来年よろしく。『スローラーナー』……パス!