『緑の家』『灯台へ』他

■バルガス=リョサ『緑の家』読了(15日)。

緑の家(上) (岩波文庫)

緑の家(上) (岩波文庫)

緑の家(下) (岩波文庫)

緑の家(下) (岩波文庫)

「あんたの地図をふたりで燃やしたことがあったろう、覚えているかね……」とアキリーノが尋ねた。「あんなものはくその役にも立ちゃあしない。地図を作った連中はこのアマゾン地方が片時もじっとしていない、燃える女みたいなものだって分かってないんだ。ここでは、川も木も生き物もすべてその姿を変えてゆく。わしたちが住んでいるのは狂った大地なんだよ、フシーア」

難解というわけではないんだけれども、複数のエピソードが平行して語られていき、しかも時系列もごちゃごちゃになっていて、さらにそのエピソードの「現在」と「過去」が地続きで語られているという作り方のため、手探り状態で読み続けた。が、ある地点から物語がどーんどーんと立ちあがっていくのには感動してしまった。
すごい小説、とてつもない小説、というのを超えて「小説ってすごい!」と思う。

ヴァージニア・ウルフ灯台へ』読了(18日)。

灯台へ (岩波文庫)

灯台へ (岩波文庫)

良かった。
第一部「窓」と第三部「灯台」は、それぞれある1日が「意識の流れ」(アレよアレ)で描かれている。実はこの2日間は10年の歳月に隔てられていて、その10年を40ページほどで描くのが第二部「時はゆく」。時間の流れは人の意識の中では決して一定ではなくて、たった数時間が永遠に続くんじゃないかと思ったり、10年が嵐のように一瞬で過ぎ去ってしまったように感じることもある。それを一冊の本で表現してしまうなんて。クラクラする。とくに第二部がすばらしい。

■この2冊の間に読んだのは高野秀行『世にも奇妙なマラソン大会』(16日)。

世にも奇妙なマラソン大会

世にも奇妙なマラソン大会

だいすきだ。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と思ってここまで来たが、だいたいどこに虎子がいるのか。無意味に虎穴に入っただけじゃないのか。

最高。これからも死なない程度(ここ重要)に誰も入らないような虎穴に入っていただきたい。そして誰も書かないようなものを書いて欲しい。あと、不思議な体験、話を集めた「謎のペルシア商人―アジア・アフリカ奇譚集」みたいなものでもう一冊読んでみたい、と思った。

■今読んでいるのはウィリアム・トレヴァー『密会』。やはり良い。