ジェイムズ・エルロイ『アンダーワールドUSA』
ジェイムズ・エルロイ『アンダーワールドUSA』読了(14日)。
- 作者: ジェイムズ・エルロイ,田村 義進
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/07/22
- メディア: 単行本
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『アンダーワールドUSA』を読んでいて驚いたのが、女たちの物語が書かれているところ。LA4部作と前2作では、いい女が出てきてもなんだか蚊帳の外で、男の子たち(うん「男の子」。)だけでつるんで、裏切ったり殺しあったりして楽しそうだな、いいな男の子ってと思って読んでいた。そしてそこがたまらなく好きだったわけだけれども、今作では作中で繰り返される「シェルシェ・ラ・ファム(女を探せ)」という言葉が表すように、男たちの目線の先には常に女たちがいる。彼女たちは彼女たちの言葉で、彼女たちの物語を語っていく。このことがなんだか新鮮で良かった。
あとはドワイト!彼の言葉にはかなりときめいてしまった。 今まで一番好きなキャラクターはバズ・ミークスだったんだが、今回ドワイト・ホリーがその座を奪った。見事に奪った。(まあ両方オッサンなので、オッサン好きというのが露呈しただけの気もするが)
カレンはいつもこう言う。「わたしたちは自分を犠牲にするには用心深すぎる」ドワイトはいつもこう言う。「おれたちはおたがいを失うには背が高くて、魅力的すぎる」
ね、かっこいいでしょ!!このドワイトのセリフが「これであとの700ページをこの男に肩入れして読んでいくことになる」と確信させたけれど、なんといっても素晴らしいのは上巻の最後。これで止めを刺された。素晴らしすぎるので引用しない。みんな読んだらいいよ!これから読める人は幸せ者だと思う。
あと最後に、もしかしたらこのセリフが〈アンダーワールドUSA3部作〉なのかも、と思ったところ。
「いつだったかしら」
「五四年の秋だ。マッカーシーの審理がテレビで放送されていた」
「わたしたちって、どうしてそのような覚え方をするのかしら」
「傲慢さのせいだろう。ふたりともあまりにも自己中心的すぎ、歴史と自分の人生を混同しているからだろう」
歴史と自分の人生を混同させた男と女の物語。