ジェイムズ・エルロイ『アンダーワールドUSA』

ジェイムズ・エルロイアンダーワールドUSA』読了(14日)。

アンダーワールドUSA 上

アンダーワールドUSA 上

アンダーワールドUSA 下

アンダーワールドUSA 下

アメリカが清らかだったことは、かつて一度もない」なんて痺れる言葉で始まる『アメリカン・タブロイド』、『アメリカン・デス・トリップ』そしてこの『アンダーワールドUSA』の〈アンダーワールドUSA3部作〉を続けて読んだ1か月(と、ちょっと)はとにかく幸せだった。こんな濃密な読書はなかなか出来ない。

アンダーワールドUSA』を読んでいて驚いたのが、女たちの物語が書かれているところ。LA4部作と前2作では、いい女が出てきてもなんだか蚊帳の外で、男の子たち(うん「男の子」。)だけでつるんで、裏切ったり殺しあったりして楽しそうだな、いいな男の子ってと思って読んでいた。そしてそこがたまらなく好きだったわけだけれども、今作では作中で繰り返される「シェルシェ・ラ・ファム(女を探せ)」という言葉が表すように、男たちの目線の先には常に女たちがいる。彼女たちは彼女たちの言葉で、彼女たちの物語を語っていく。このことがなんだか新鮮で良かった。

あとはドワイト!彼の言葉にはかなりときめいてしまった。 今まで一番好きなキャラクターはバズ・ミークスだったんだが、今回ドワイト・ホリーがその座を奪った。見事に奪った。(まあ両方オッサンなので、オッサン好きというのが露呈しただけの気もするが)

カレンはいつもこう言う。「わたしたちは自分を犠牲にするには用心深すぎる」ドワイトはいつもこう言う。「おれたちはおたがいを失うには背が高くて、魅力的すぎる」

ね、かっこいいでしょ!!このドワイトのセリフが「これであとの700ページをこの男に肩入れして読んでいくことになる」と確信させたけれど、なんといっても素晴らしいのは上巻の最後。これで止めを刺された。素晴らしすぎるので引用しない。みんな読んだらいいよ!これから読める人は幸せ者だと思う。

あと最後に、もしかしたらこのセリフが〈アンダーワールドUSA3部作〉なのかも、と思ったところ。

「いつだったかしら」
「五四年の秋だ。マッカーシーの審理がテレビで放送されていた」
「わたしたちって、どうしてそのような覚え方をするのかしら」
「傲慢さのせいだろう。ふたりともあまりにも自己中心的すぎ、歴史と自分の人生を混同しているからだろう」

歴史と自分の人生を混同させた男と女の物語。